日常生活の中で意識して呼吸をしている人はいないと思います。呼吸は自律神経系に支配されていて通常は不随意活動(意識しない動作)をしているからです。もし、意識しないと呼吸が出来ないとしたら、怖くて夜に寝れなくなってしまいますね。

 一方、試験の前とか、バッターボックスに入る前とかに気持ちを落ち着かせるために、深呼吸をしたり、病院で血圧測定の時に高めの値が出た時に、医師に「はい、深呼吸をしてみて」と言われて、それができるのは呼吸が随意機能(意識してできる)でもあるからです。

 呼吸は意識的にも出来るし、無意識でもできる、つまり随意神経系と不随意神経系の両方に支配されている唯一の生理機能なのです(ヨーガの達人は心臓の拍動数や体温、その他諸々の生理機能を自分の意思でコントロールできるらしいけれどネ)。

 意識的に呼吸をコントロールすることによって、人間の生理機能の80%を支配しているといわれる自律神経系の活動状態を変化させ、様々な不随意機能に働きかけることが出来るということを人は昔から経験的に学んでおり、宗教、芸能、武道、スポーツ、医学・・・などの様々な分野でいろいろな呼吸法が取り入れられてきました。

ヨーガのプラナヤーマーといった極めて難しい呼吸コントロール法はさておいて、リラクゼーションや健康増進のために手軽に出来る呼吸法をいくつか覚えておくととても便利です。精神的・身体的緊張を解いたり、痛みを緩和するために効果があります。

 ところで、安静呼吸時に不随意的に行う一回の呼息あるいは吸息で出入りする空気の量は、成人で約0.5l(リットル)ということはご存じですか?一方、肺活量(一回の呼吸で可能な最大の換気量)は成人男性で3~4l、女性で2~3lで、あり、つまり目一杯意識して呼吸すれば成人男性では一回の呼吸で3~4l、女性で2~3l程の空気が肺に出入りさせられるのですね。

さらに最大に吐き出しても肺の中には1~1.5l(成人)の空気が残っている(残気量)ことはご存じでしたか?たまには、もっと肺を大きく使って、空気の出入りを増やしてあげることも肺の機能を高めるためには必要なことなのです。特に運動嫌いの人には!!

 呼吸法の基本は簡単に言うと、姿勢を正しくし、意識を呼吸だけに集中し、呼息、吸息を大きく行うことで、特に呼息に意識を向けること(吸う方より吐く方を意識して行う)であり、鼻から吸って口から吐くことと、至って簡単。

 誰でも、何処でも出来ますね。昔から座禅の呼吸法とか長息法とか、吐き出すときに阿(あ)・・・吽(ん)・・・と声に出して長い時間を掛けて吐くとかいろいろありますが、アニマル浜口の「それ行け、京子、ウワッハッハッハッハ、ウワッハッ八ッハッハ」も呼息を断続して長い時間かけて行う点で呼吸法の一種ですね。

練習後にリラックスさせるために京子さんにさせているようですが、あまり強くやるとアドレナリンが出てきてリラックスには逆効果のように思われますが、それはそれで闘争モードに入るには良いでしょうね。

つまり呼吸の仕方で自律神経の副交感神経の活動を優位(リラックス)にもできるし、交換神経の活動を優位(エキサイト)にも出来るわけです。笑う健康法は昔からありました。ヨーガの中にもあるようです。
 
 アンドルー・ワイルの「癒す心、治る力(実践編)」角川書店の中でも最適な健康を得るための8週間プログラムと言うのがあり、この中の呼吸法(段階を追ってレベルアップしていく)もなかなか良いと思います。

私は鍼治療の最中に患者さんをリラックスさせるため、あるいは痛みを緩和させる方法としてたまに呼吸法を指導しています。

もちろん呼吸を意識的に行うことは血行を促進する効果もあり、お肌の健康のためにもとても良いことなのですね。




この記事のタグ ≫