先日、所用で某総合病院に出かけた。
いつものとおり、休憩室や廊下の展示場所で病院や市が行っている健康セミナーや、講習会のテキストや記事に目を通そうと思った。
この日はめずらしく目新しい綺麗な冊子が積まれていて、表紙には良く見かける「無料、どうぞご自由にお持ち下さい」の文字があり、いわゆる「フリー・マガジン」。
 健康や医療に関する解説があり、その後にそれに関する健康食品やサプリメントの広告が満載という例のパターンのもの。

 掲載されている食品や材料をざっと見てみると・・・黒糖バナナ黒酢、DHA、EPA、サメ生肝油、スクワレン、オメガ3脂肪酸、ベータグルカン、グルコサミン、ラクトフェリン、コラーゲン・・・・などなど。
 今話題の名前が並んでいて、これらの効果・効用の解説が一見科学的ではあるが、相変わらずの「針小棒大」で・・・。

 私がよくチェックしている独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページの中の「健康食品の安全性有効性情報」では、これらの材料は・・・
「ヒトでの有効性については信頼できるデータが見当たらない」、「○○薬との併用でおそらく有効と思われる」、「適切に用いれば経口摂取でおそらく安全と思われるが、妊娠中・授乳中の使用は避けるべき」、「食事以外から一度に過剰摂取するときは注意が必要」・・・
などと、慎重な表現になっている。

 「こんな実験結果も出ています。」程度のもので、必ずしもヒトを対象にして科学的・医学的に実験検証されていない(例えば医薬品で行われる2重盲検ランダム化比較試験などされていない)ものばかりであることをキチンと認識しておく必要がある。

  時間つぶしで見るフリー・マガジンとは言っても、病院に置かれていればそれなりに信頼できる内容と患者さんは思ってしまうのではないでしょうかね・・・あきらかに疑似科学に属する誇大広告満載のこのようなフリーマガジンは病院側でちゃんとチェックして排除すべきではないでしょうか・・・。
フリーマガジンが何たるものかを理解しているヒトばかりではないのですから・・・「なんでこんな良い本がただなの!?」と不思議がり、かつ有り難がっているおばあちゃんもいるのですから。

 健康食品(健康補助食品)はほんとに要注意です。
「食べました」、「効きました」、「治りました」的表現には、眉に唾をつける必要があります。ほんとうに効くなら医薬品とすべきで、ただし、そのためには医学的エビデンス(効用の科学的な実証)が必要であり、実験検証のためには、莫大な費用と時間がかかります。
 健康(補助)食品には十分な科学的エビデンスは必要ないのです。
どこかの学者が実験した結果「こんな効果があるらしい、ただしラットの実験で、大量に食べさせた場合・・・」なんていうのを、あたかもヒトに大きな効果があったように宣伝していたりします。

 宣伝のうたい文句は、こんな症状の人がこんなに良くなった、こんなに効果があった・・・癌に効いた・・たぐいの経験談ばかり(ゴーストライターの捏造が多い)ですからね。いわゆるバイブル本を使った違法商法もはびこっています。

 ダイエットのための中国茶で死亡した人が出たのは大分前ですが、新奇なものを試すなら命がけの覚悟が必要ですね。
 ヒトは大昔からそうやって試行錯誤を重ねて、多くの犠牲者の下に毒薬と良薬を選別してきた訳ですが、かといって何も自分から積極的にそんな実験に協力する必要はありませんね。


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