「四十肩」とか「五十肩」とか呼ばれる肩の痛みと、それにより肩の動きが制限される疾患は鍼灸治療が良く適応する疾患です。痛みが出ても「いつの間にか直っちゃった。」という場合もあるし、「2年間も痛みが続いている。」といった場合もありますが。回復期間に長短があってもいつの間にか直ってしまうのが五十肩です。

 上肢を体幹に引き止めている(ぶら下げている)上肢帯(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の回旋腱板が中心)がなんらかの原因で痛んだり、上腕二等筋長頭腱炎が進行して肩関節周りの軟部組織(関節包、靭帯など)が広く傷害されたのが五十肩(肩関節周囲炎)といわれる疾患です。
 髪を結ったり、梳かす動作(結髪動作)や手を背中側に回して帯を結ぶ動作(結帯動作)で肩関節部に痛みが生じますが。高速道路で通行料を払おうとして、あるいはお釣りをもらおうと手を伸ばしたときにズキンとくる(上腕二頭筋腱長頭炎)。または自分の左隣の人にビールを注ごうとした時にズキンとくる(腱板炎)。がはじまりで、腕を動かした時に生じる痛みがしだいに激しくなっていきます。

 続いて安静時にも痛んだり、夜間に痛みで目が覚める時期が続きます。その後痛みは次第に和らいでいきますが、肩関節の拘縮がはじまり、痛みは無いけれど腕が思うように上がらない、またはある位置に腕が来た時にのみズキンとするなどの症状がいつまでも残ってしまう場合があります。そのうち回復するのですが、人によっては2~3年間も悩まされる場合があるようです。

 ほかの治療で鍼灸院に通っている人は、「なんか最近肩が痛くて、ついでに見てください。」と訴えますので、早い時期から鍼灸の治療を受けることができますので、比較的早い回復が見込めますが、多くはかなり症状が進んでから鍼灸院に来られます。「整形にかよって電気かけてても良くならないから、鍼灸でなんとかして。」と言って来るわけですが、そんな人の多くが肩甲上腕リズム(肩甲骨の外転角度と肩関節の外転角度の比率が一定に保たれていること)が狂ってしまっていたり、棘上筋と三角筋の作動順番が狂っていたりして、正しい腕の挙上動作ができないため、つまり腕を挙げるために使う複数の筋肉の作動シークエンスが狂ってしまっているために、痛い、腕が上がらない状態になってしまってるのです。

 痛みを避けるためや、痛くて筋肉を使わなかったために起こっていた異常な動きが学習されてしまっていて、その異常な動き方のために痛みから抜け切れないでいるのに気がついていないのです。初めから患側の肩が上がってしまっている人、肩関節を回転させる前に肩が上がってしまう人、など第三者がみればいかにも変な姿勢や動きになっていると分かりますが。ご本人は意外と気が付いていない、気が付いていても痛みを避けるために自分が意識して行っている動作だと思っているのです。異常な動きが痛みの発生源であることに気が付くことが必要です。一旦身に付いた動きを矯正するためには正しいリハビリが必要になります。これが結構時間が掛かる作業になってしまうのですが、人任せで治るものではないので、あせらず取り組んでもらいたいものです。

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